2025年夏、東京・目黒区の学芸大学駅前で撮影された動画がSNSを賑わせました。
ビルや住宅が立ち並ぶ都会の歩道を、まさかの南国生まれのカニが横歩きしているという、誰も予想しなかった光景です。
この出来事は単なる珍事件ではなく、都市と自然の関係や生態系の変化にも目を向けるきっかけとなりました。
SNSで拡散されたカニの姿
路上を歩くカニが注目を集める
2025年8月初め、学芸大学駅前で撮影された映像には、通勤や通学で多くの人が行き交う歩道を、1匹のカニがゆっくりと横歩きする様子が映っていました。
日常とはかけ離れた光景に、多くの人が驚きと興味を示し、「サンマの街にカニまで登場?」といった冗談もSNSに投稿されました。
最初の目撃は6月末
初めての発見は2025年6月28日の深夜。
駅から数十メートル離れた車道沿いを歩く姿を、通行人がスマートフォンで撮影しました。
映像がSNSで広まると、専門家が種類を調査し、甲羅の形や脚の比率などから「ミナミオカガニ」である可能性が高いとされました。
このカニは本来、沖縄や先島諸島の海岸に生息しており、都心で見られるのは極めてまれです。
ミナミオカガニの生態と特徴
どんな場所に住んでいるのか
ミナミオカガニは、琉球列島周辺の砂浜や海岸近くで生活する陸生のカニです。
海に戻るのは卵が孵化して幼生が育つ時期だけで、それ以外はほとんど陸上で暮らします。
夜行性で昼間に人目に触れることは少なく、都市の住宅街で見つかるのは非常に珍しいことです。
東京で見つかることの珍しさ
本来の生息地から遠く離れた東京で見つかることは、生態学的にも注目されます。
気候変動や人間の活動による生物分布の変化を示す事例としても、学術的に興味深い出来事です。
再び現れた別のカニ
1か月後の再目撃
初回の目撃から約1か月後の7月26日夜、学芸大学駅近くのコンビニ前で再びカニが発見されました。
6月の個体はすでに保護され、ペットショップを経て新しい飼い主のもとへ渡っていたため、この日は別の個体と考えられます。
周辺に複数のカニが生息している可能性も指摘されています。
東京に現れた理由の考察
飼育されていたカニが逃げ出した説
東京には熱帯性のカニを扱うペットショップが存在し、観賞用に販売されることもあります。
ケージの破損や飼い主の放棄によって外に出た可能性があり、人に慣れた様子も報告されています。
貨物や園芸品に紛れ込んだ説
南西諸島から運ばれた観葉植物や石材に幼体が混ざり、物流ルートを通じて東京に届いた可能性も考えられます。
しかし今回の個体はすでに成長しており、この説には疑問も残ります。
なお、飲食店から逃げ出したという説は、現地店舗の証言によって否定されています。
食用としての評価
味や食べられる部位
沖縄在住のライターによると、ミナミオカガニを塩ゆでにすると香りはカニらしいものの、味は泥臭く旨味が少ないとのことです。
食べられるのは主にハサミ部分の身で、胴体や脚の可食部はごくわずかです。
調理の難しさ
殻は非常に硬く、調理には手間がかかります。
カニミソも泥抜きしても臭みが残るため、食材としての価値は高くありません。
他の都市部での珍しい生き物の事例
東京周辺での報告
- 荒川の河川敷でクロベンケイガニの大群が歩道を横断
- 文京区の湧水で在来種サワガニが定着
- 江戸川区や浦安市沿岸でベンケイガニが生息
- 東京湾で熱帯魚やサンゴが繁殖
- 公園で外来種インコが桜の花を落とす被害
こうした事例は、都市の生態系が変化しつつあることを示しており、今後さらに増える可能性があります。
ネット上の反応
驚きとユーモア
SNSでは「目黒にカニがいるなんて!」という驚きの声や、「寒くなる前に保護を」という心配の声が多く寄せられました。
ユーモラスな投稿も多く、地域の話題として広く共有されました。
情報の広がりと課題
YouTubeでは動画が数十万回以上再生されましたが、真偽不明の情報や憶測も飛び交いました。
情報の拡散速度の速さと、正確な情報の提供の難しさも浮き彫りになりました。
専門家の見解
有力な説と環境変化
最も有力視されるのは「ペットの逃走説」ですが、物流経路や気候変動による生息域の変化も否定できません。
東京湾で熱帯魚やサンゴが確認されるなど、都市の“亜熱帯化”が進んでいる現状も影響している可能性があります。
野生動物に出会ったときの対応
安全に行動するためのポイント
- 直接触らず、安全な距離を保つ
- 写真や動画で記録し、場所も残す
- 自治体や動物愛護センターに連絡する
- 一時保護する場合は直射日光を避ける
- 許可なく飼育しない
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まとめ
学芸大学駅前でのカニ騒動は、単なる珍事件にとどまらず、都市と自然の関わりや、生態系の変化、そしてペットの管理責任などを考えるきっかけとなりました。
偶然の出会いから、人と自然がどのように共生していくべきかを考えることが求められています。